ガムかってください

このごろ ほんとう話

 

先日ゆうがた、コンビニATMを利用しようと、お店にはいろうとしたら、とつぜんミズシラズの女の子に、声をかけられました。

「すいません」

なにごとだろうと、ふりかえると、

「ガムかってください」

ふしんに思いつつ、話をきくと、アイドルとのコラボガムが、人気がありすぎて、ひとり一個しかかえない、もっとほしいので、替わりにかってください、という。

アドケナイかんじの、女子高生でしょうか、千円札をいちまい、ぴらりと出しました。

なるほどと、合点しましたが、あまりに突然なので、一瞬かんがえました。

しかし、ことわる理由も、おもいつかなかったので、札をうけとり、そのままレジ前の、机に陳列された、ハデなボトルガムに向かいました。

そうして、店員のオバサンに、すみやかに差しだしました。

...ところが彼女は、よそう外に、販売をこばんだのです。

「もうしわけございません、げんてい品のため、一度かったひとのオシリアイの方には、おうりできないルールになっておりまして...」

 

 

 

じぶんの後方にいる、女子に気がついて、状況をハアクしたのです。

「...シリアイといっても、今そこで、はじめて会ったばかりなんだけど...」

「もうしわけございません、ひとり一個というキマリになっておりますので...」

やむをえず、ガムを元にもどすと、無言で女子は、おもむろに立ちさっていきました。

...まじまじと、あらためてガムをみつめながら、

「これが...そんなに人気なんだ...」

「今すごいんですよ、とくに女の子がね...」

「...」

ATMの用事をすませて、夜空のかえりしな、出来事をふりかえりました。

なるほど、...やはり、店員さんは正しかった。...

もしあのまま、ちっぽけな温情にかられて、あの子にブツをわたしたとしたら、べつの人のよろこびを一個、うばうことになったのでしょう。

よりおおくの人に、公平にしあわせをという、神々しい思想が、ほどこされていました。

 

 

 

 

 

 

 

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